テレビウォッチャー

2015年6月1日月曜日

第24回:ピープルメータ調査の導入 後日談(続々) 有名無実に終わる「視聴率調査検証委員会」


検証委員会の活動
  ピープルメータ調査が正式に導入されてからもこの調査についての「お目付役」として、「視聴率調査のあり方に関する調査研究会(検証委員会)」の活動は続いた。
  検証委員会の主な活動は、導入時にそうであったように、主としてイ)ピープルメータ調査のサンプリングの状況、ロ)視聴実態の記録に関する事項、ハ)サンプル世帯の管理、ニ)データ管理と集計システムについての4項目で、調査主体であるビデオリサーチ社のピープルメータ調査サンプル世帯の調査協力を監視する応諾率のチェックとサンプル世帯の家族によるボタン操作の正確性とを重点的に精査することであった。

曖昧な監査
 しかしながら検証委員会の行った精査は、ただただ唖然とするばかりの実に曖昧なものでしかなかったのである。そもそもこの検証委員会の構成員からして、日本民間放送連盟(民放連)、日本広告主協会(主協:現・日本アドバタイザーズ協会)、日本広告業協会(業協)の調査責任者がメンバーとなっているのではあるが、彼らは自社内において自らの仕事に忙殺されているため委員会の肝心要の「しきり役」が不在で、ビデオリサーチ社に対し“ヒアリングを行う”としながらも、その実態はビデオリサーチ社がまとめてきた「調査内容」を聞き取るだけという体たらくで、同社からの報告と説明に対し、幅広い観点から、その妥当性を検証するには遠く及ばないものであった。曰く、“現行の視聴率調査に関する共通認識を得ることができた”という文言の記述が、検証報告書に幾度となく繰り返されたのであった。

わずかな救い
  業界三団体からの寄せ集めとなった「検証会」では、“共通認識を得る”ことで精一杯だったのかも知れない。しかし毎年都合7回も検証会を開きながら、その程度の監査内容では「勉強不足」の誹りを免れることが出来まい。
 しかし競合社不在の一社独占体制にあるビデオリサーチ社には、検証会を開くことで、少なからずプレッシャーを与えたということを考えるなら、検証会の「意義」もあながちないとは言い切れないのかも知れない。

「検証」は専門機関で
 結局、“その程度のことしか出来ない”のであれば、やはり「検証会」は三業態の調査責任者による片手間ではやっていけないし、「検証会」の内部に調査の専門家を「専従」させるか、米国でそうであるようにMRC(Media Rating Council)やCONTAM(Committee On Nationwide Television Audience Measurement)などのような第三者の監視機関を設立し、視聴率調査において最低限遵守されなくてはならないミニマム・スタンダードやプリンシパルズのようなリサーチ・ガイドを作成。視聴率調査の実施における原理・原則に照らし合わせた、キッチリとした「監査」を行う必要があるだろう。
 そうすれば、少なくとも“共通認識が得られた”とか、“検証に当たっては、ビデオリサーチ社の全面的な協力姿勢を高く評価する”などという愚かな発言が出ては来ないはずである。
 いずれにせよ、有名無実な委員会の活動にホッと胸を撫で下ろしているのは、誰あろう調査主体のビデオリサーチ社であることを忘れてはなるまい。
 ピープルメータ調査の導入で、一波乱も二波乱もあったが、嵐が過ぎ去った後はニールセン社の視聴率調査ビジネスからの撤退により、ビデオリサーチ社の視聴率調査事業は「安堵」されたのである。

 次回からは「デジタル時代と視聴率調査」について論じる予定である。