テレビウォッチャー

2014年10月1日水曜日

第16回:大きく舵を切った80年代の米国視聴率調査

3大ネットワークを脅かすCATV
 米国のテレビ事情について、少しお話ししてみよう。
 1970年当時、テレビが最もよく視聴される夜の時間帯(プライムタイム)の3大ネットワーク(ABCCBSNBC)のオーディエンス・シェア(全世帯のテレビ視聴に占める3大ネットワークの視聴割合)は、軽く90%を超えており、圧倒的な力を示していた。
 ところがテレビの難視聴対策として登場したケーブルテレビ(CATV)の成長は著しく、当初は7チャンネルの番組しか楽しめなかったケーブルテレビの受信契約は順次増加し、1990年には33局も視聴できるようになり、ついに3大ネットワークのオーディエンス・シェアは40%を下回るほどにまで落ちていったのであった。
 当然のことながら、記憶に頼る日記式の調査手法で、多局化したテレビを見ている人の視聴を正確に測定することは出来なくなったのである。

マーケット・セグメンテーションへのニーズ
  加えて広告主は自らの商品広告に「セグメンテーション」の考え方を導入。自社製品のターゲットに合わせたマーケティング・データとして、性・年齢別の細かい視聴率データを求めたのである。
 コカコーラやジレット、マクドナルドなどの広告主は、Y&RJ.W.トンプソン、BBDO、テッド・べーツ、グレイ、レオバーネット、マッキャンなどの大手広告代理店を焚きつけ、当時英国でターゲット別の個人視聴率の調査を実施していたAGB社に米国での実験調査を呼びかけ、ボストンで機械式視聴率調査「ピープルメータ」の実施に踏み切らせたのであった。

お尻に火がついたニールセン
 英AGB社から商品ターゲット別に集計される個人視聴率の結果は大きな評価となって業界を席捲。これまで「時期尚早」を決め込み、この調査の導入に極めて否定的な立場をとっていた米ニールセン社も、やむなく導入に踏み切らざるを得なくなったのであった。
 とはいえ、全米1,000サンプルによるニールセンの機械式個人視聴率測定機(ピープルメータ)の調査は、業界に大きな波紋を投げかけたのである。この調査の導入に積極的な
大手広告主に対し、ピープルメータ調査からはじき出される視聴率は、従来の日記式調査に比べ1割以上も低く出たため、ネットワーク各社は断固反対を表明し、ネットワーク局が中心となってニールセンの視聴率調査の妥当性を監査している「CONTAMComittee On Nationwide Television Audience Measurement」は、ニールセンのピープルメータ調査に対し、“CBS lashes out at meter flaws’(ニールセンの調査は欠陥とCBSが批判)”なる記事で応酬。事態は正式導入か否かを巡って、紛糾した。
 この調査の問題は大きく二つ。調査対象サンプルの代表性とボタン操作の信頼性を巡る論争であった。1987年、この導入は果たされるのであるが、10年後、今度は同じ問題が、わが国において繰り返されることになるのである。            (つづく)

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