テレビウォッチャー

2014年4月16日水曜日

映像メディアの調査はどのように行われているのか? 第6回:開局当初のテレビの調査

 今年はテレビ放送が始まって60年という節目の年であった。テレビ放送の歴史をたどるとき、「視聴率」の果たした役割は大きい。その時々の番組の移り変わりに「視聴率」の存在が大きく関わっているからである。
開局当初の視聴率調査
  「テレビの調査」には、19539月、日本テレビが開局直後に行った東京駅八重洲口・名店街のテレビ展示即売会場で来場者を対象に行った調査がある。この調査は「視聴者のテレビ感について」と題するアンケート調査で、来場者616人からの回答が得られた。また同年9-10月にはNHKがテレビ所有世帯1,330サンプルを対象に実施した「番組嗜好調査」がある。しかしこの両方の調査とも「視聴率」を調べたものではない。
 初めて「視聴率調査」が行われたのは開局の翌年からである。NHKがテレビ受像機の普及の早かった京浜地区の15歳以上の男女1,100人を対象に、また広告代理店の電通が東京23区で300世帯での調査を行ったのが、その始まりである。

導入の背景にはラジオ調査の経験
 テレビの視聴率の調査がラジオの聴取率調査の経験に基づいて実施されたことは、至極当然の成り行きである。ただ異なるのは、NHKの調査は春と秋の年2回。電通の調査は2/5/8/11月の年4回実施されたことと、その調査目的の違いであった。
 すなわちNHKの調査は“この番組はどんな人たちに、好んでみられたのか?”を知り、「番組作り」に主眼を置く調査であるため、「見た人」を対象に調査を実施したのに対し、電通の調査はテレビが“到達メディアとして家庭の中でどのように見られているのか?”に主眼が置かれていたため、「世帯」をベースとして実施されたのである。

二つの調査の違い
  NHKと電通、両者の調査の違いをまとめたものが下の表である。
 NHKの調査が「個人」を対象に、放送時間の半分以上を見た人を「視聴」とカウントしたのに対して、電通のそれは「世帯」を対象に、番組を一寸でも見たら「部分視聴」、全部見いたら「完全視聴」として、「部分視聴」を「完全視聴」の1/2とカウント。番組の視聴率を算出したのであった。このため、両社の発表した視聴率には大きな「違い」が生じたため、ジャーナリズムの関心が高まり“どちらの調査が正しいのか?”という視聴率の「正確性」を巡る議論が持ち上がったのであった。(つづく)

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